「充電器の種類が多すぎて選べない。」
たくさんの充電器が市場に出回っている中で、適切な充電器を選ぶのは普通の人には至難の業でしょう。
その結果、おそらくほとんどの人は「なんとなく」「安かったから」「だれかが勧めてたから」という理由で選んだのではないでしょうか。あるいは、何かに付属していたものをそのまま使うか。
でも、良い充電器を知らない人は、新幹線の存在を知らずに東京から大阪まで快速電車で行こうとするようなものです。新幹線という最適な移動手段、つまり良い充電器を知れば世界が変わります。
この記事では、「課長のデスクの充電器をもっとスッキリさせたい!」と思っているぼくが、充電器選びの基本を初心者向けに解説します。今回は充電器の出力がテーマです。
毎日使う・長く使うものだからこそ、ポイントをおさえて自分にあった充電器を選びましょう。
充電器の出力はワット数を見る
充電器のパッケージには出力を表す数値として、「電力(W)」「電流(A)」「電圧(V)」の3つが記載されています。
「電力(W)=電流(A)×電圧(V)」小学校で勉強しましたね。
そして、このなかで見るべき数値は電力(W)、つまりワット数です。「電流(A)」「電圧(V)」は見なくていいです。
高出力の充電ではワット数だけでなく電流(A)と電圧(V)の組み合わせが重要な場合もありますが、普通の人は気にしなくていいです
端末側の必要電力はワット数で表記される
スマホやタブレット、ノートPCなど充電する端末はさまざまですが、そのどれもが充電時間を語るうえでワット数をもとにしています。
たとえばiPhoneなら「20W急速充電で30分で50%充電可能」といった感じです。
日本の通貨の単位が円なのと同じくらい、充電器の出力をワット数で語るのは当たり前のことなんです。
アンペアは見なくていい
例えば、10Aでも1Vなら結局10Wです。3Aでも15Vなら45Wです。
店頭やネットで充電器を探すと、「2.1A急速充電」というように、アンペアを強調してる商品もたくさんあります。
「2.1A」も「急速充電」もどうでもいいので、とにかくワット数を計算しましょう。
仮に、東京から新大阪まで停車駅はたったの2駅!って言われても、時速が遅くて所要時間めっちゃかかるならなんの意味もないです。
充電器を見るときは、「で、結局何ワット出力なん?」と常に問いかけるようにしましょう。
アンペアを強調してる商品はむしろはずれ認定して選択肢から除外しましょう。
”急速充電”もあてにならない
「急速充電」と言われると良さそうに感じますが、これも地雷ワードです。”急速充電という謳い文句”にはなんの意味もありません。
何度も言いますが、「で、結局何ワット出力なん?」これを忘れないでください。
実際、12Wで急速充電を謳っている充電器もありますが、つられてはいけません。
鉄道で例えると、「快速は速くていいよ」と言っているようなものです。たしかに快速は速いですが、それは普通列車と比べたときの話です。同じ区間の特急や新幹線を差し置いて、快速は速いよと言われても、的外れだとだれもがわかるでしょう。
12W急速充電器もこれと同じです。
抽象的な表現も無視
- フルスピード充電
- 最高速度
- レビューコメントの「充電が速くて便利」
商品説明やレビューコメントに見られる、これらの表現も全部あてになりません。
何を基準に、何と比較して、だれの感覚で語っているのか。すべてが曖昧です。
普通列車しか知らない人が快速に乗ればそれは速いと感じるでしょうが、新幹線とは比較になりません。
もう一度言います。「で、結局何ワット出力なん?」
W表記のないメディアはあてにならない
充電器を紹介するネット記事の中には、ワット数の表記がないものもあります。
東京→新大阪の新幹線で例えるなら、
- 途中の停車駅が○○と△△と□□で、、、
- 時速〇kmで走行して
- こっちの窓からは富士山も見えて
で説明が終わりです。いやいやいや、所要時間は?
一番大事なところが抜けてますよね。
充電器を語るのに出力を書かないのはこれと同じです。出力を書いてない記事=あてにならない、と思っていいです。
各端末に必要な出力の目安
- スマホ:20W
- タブレット:20~30W
- ノートPC:45~65W(機種によります)
これが結論です。
ここでは、スマホの20W出力について掘り下げていきます。
おすすめ充電器〇選!なんていい加減な記事に騙されないよう、はずれ充電器を見極める目を養いましょう。
ちなみに、一部の高性能ノートPCは100W以上を要求されるものもありますが、普通の人が使うノートPCは45~65Wと考えて問題ありません。ノートPCにもともと付属している充電器で必要な出力を確認しましょう。
スマホの充電は20W
「スマホ用充電器の理想は20W、最低でも15W。」
これだけは覚えてください。この基準があれば、はずれ充電器を選ぶ可能性はぐっと下がります。
スマホ用の充電器選びにおいて20Wは絶対条件です。賃貸物件で風呂トイレ別を条件に探すのと同じです。こだわり条件で一番最初にチェックを入れる項目だと思ってください。20W未満は選択肢から即除外です。
なお、他の付加価値がある場合に限り、15Wで妥協するのも選択肢のひとつです。
たとえば、
- ワイヤレス充電器
- 超軽量コンパクトな充電器
- ケーブルやスタンド内蔵のモバイルバッテリー
こういった付加価値のあるものは、必ずしも20Wにこだわらなくてもいいです。でも、最低15Wです。何度も言いますが、充電速度がまるでちがいます。(テスト結果は後述します)
とくにモバイルバッテリーは付加価値をアピールするものが多いので要注意です。「2台同時充電も可能!最大15W出力」これつまり、1台あたり7~8Wです。貧弱すぎて2台充電運用は現実的ではありません。ワイヤレス充電も便利ですが、7.5Wではいつまでたっても充電されません。
15W=家賃激安だからユニットバスで我慢する、という感じです。15W未満=風呂トイレなしです。妥協しちゃダメなラインです。
充電テストの結果
「今使ってる10Wの充電器でも充電できてるし、20Wじゃなくても問題ないのでは?」
こう思った人もいるでしょう。たしかに、ぼくがスマホには20Wと言ったのはあくまで急速充電に必要な出力であって、20W未満では充電できないという意味ではありません。昔のiPhoneに付属していた充電器はたった5Wですが、最新のiPhoneだって充電できます。
ですが、実際に比較すると20Wとそれ未満では充電速度に雲泥の差があることがわかります。この結果を見ても「5Wでもいいや」と思う人には、これ以上ぼくから言うことはありません。
iPhone12・Galaxy S24それぞれ、残量1%から充電した結果です。最初の60分での充電速度がまるでちがうことがわかると思います。
30分経過時点で、20Wなら50%を超えるのに対し、5Wや12Wではたった20%前後。適切な出力で充電することがどれほどのちがいを生むかわかると思います。
5Wの充電器を使っている人は、新幹線という乗り物を知らずに普通列車で長い時間かけて東京から新大阪まで行くようなものです。
出力はケーブルと端末にも左右される
スマホが実際に何ワットで充電されるかは、充電器・ケーブル・端末それぞれの対応出力によって決まります。
1つ目のパターンでは、充電器は20W出力ですが、ケーブルが15Wまでしか対応していないため、15Wでしか充電できません。100均で売っているケーブルなどは対応出力が低いことが多いです。
2つ目のパターンでは、充電器・ケーブルともに20W以上のため、20Wでスマホを充電できます。ただし、スマホの対応上限が20Wなので、65Wで充電はされません。この場合においては、65W充電器はオーバースペックと言えます。
一般的に出力の大きい充電器ほど本体が大きくなるので、過剰な出力の充電器はおすすめしません。出力の高い充電器は汎用性が高く便利ですが、自分の端末に必要な出力と充電器の大きさのバランスを考えて選びましょう。
ぼくの友人は以前、携帯ショップで勧められて最大65W出力/USB-C×3ポートの充電器を購入しました。でも、普段使うのはiPhoneだけで、たまにワイヤレスイヤホンを充電する程度。環境が変わっても使えるという意味では良い製品ですが、現時点では明らかにオーバースペックです。
一部のスマホは25Wや45Wにも対応していますが、多くのスマホは20W対応です。
とにかく出力を見る
充電器の良し悪しは、出力×付加価値で決まります。軽量コンパクト・ワイヤレス・ケーブル内蔵などなど、いろんな要素があります。でも、付加価値がどんなに魅力的でも、必ず出力を確認してください。
新幹線の予約をするのに、所要時間を見ずに予約しますか?仮に、都合のいい時間に超格安のグリーン席があって、おまけに特別サービスも付いてくるとしても、東京から新大阪まで所要時間10時間だったら乗りませんよね。充電器の出力を見ずに選ぶというのはそういうことです。
最近のネット記事や動画では、ワイヤレス充電やケーブル内蔵などの付加価値を推したものも多いです。ひどいものは、充電速度について、「急速充電にも対応しています」の一言で終わりです。ワット数も、実際の充電時間も載せていない。あまりにもお粗末です。所要時間の書いてない新幹線と同じです。
”急速充電”に明確な定義はありません。(5Wを基準にして)12Wで急速充電と表記する製品もあります。新幹線(20W)を差し置いて、普通列車(5W)より速い快速列車(12W)ですよ、と言っているんです。
“〇アンペア”でも”急速充電”でもなく、”20W”です。
スマホ1台なら20W、2台同時充電が想定されるなら合計最大出力を必ず確認してください。
ワット数は本体裏面か箱で確認
充電器の出力は、商品のパッケージや本体裏面で確認できます。Amazonなどの商品ページにも記載があります。
ちなみに、昔のiPhoneやiPadに付属していた充電器の出力は次のとおりです。
2ポート以上ある充電器は、単独使用時の最大出力・複数ポート使用時の合計出力・各ポートごとの出力振り分け、それぞれ確認が必要です。
おすすめできる充電器とできない充電器
ここまでの内容をふまえて、スマホ用としておすすめできる充電器とおすすめできない充電器の具体例をそれぞれ紹介します。
CIO Mate Charger001
- USB-Cポート×1
- 20W出力
20W出力で、超コンパクト、価格も2000円未満。言うことなしです。強いて言えば、ポートが1つなので、端末が多い人には不向きですが、スマホ1台充電するには充分な製品です。
同じCIOのスパイラルケーブルと合わせるとめちゃくちゃコンパクトにまとまるのでおすすめです。
無印良品の急速充電器①
最近、無印良品の充電器をおすすめする記事をよく見かけますが、はっきり言ってスマホ用にはおすすめしません。
- USB-A×2ポート
- 合計12W出力
はい、もうお察しですね。12W出力。その時点で選択肢から除外しましょう。”急速充電器”の謳い文句が意味を持たないことのいい例です。
あえてメリットをあげるなら、安いこと。でも、いくら安くても博多から新大阪まで普通列車では行かない。家賃激安でも風呂トイレなしは選ばない。スマホ用に12Wは選ばない。充電器は毎日使うものだからこそ、少しお金を出してでもまともに使えるものを選びましょう。
無印良品だからなんか良さそうって思って買う人が多そうですが、正直これをスマホ用充電器としては絶対おすすめしません。
無印良品の急速充電器②
同じ無印良品の充電器でも、ポート構成が異なるこちらはどうでしょうか。
- USB-C×1/USB-A×1
- 最大20W出力
きました20W。第一関門突破です。これならいいかも。
と思ったみなさん、ここまで読んでいただきありがとうございます。残念ながら、これもなしです。
理由はUSB-C単独使用時は20Wでも、2ポート同時使用時は合計15W出力だから。
15W出力(1台あたり7.5W)が物足りないのは言うまでもないし、20W維持のためにUSB-Cポートしか使わないならそもそも2ポート搭載じゃなくていいですよね。それならUSB-C×1ポートのみでもっと小さいCIOのほうが良い選択肢です。
1台しか充電しない、かつ、USB-CだけじゃなくUSB-Aのケーブルを使うこともある、という人ならありかもしれません。ただし、USB-Aは18W出力です。ケーブルをUSB-Cに統一して、USB-C×1ポートでコンパクトな20W充電器のほうがおすすめです。
無印良品だからなんか良さそう、ではなく、まずは出力を確認しましょう。
Ankerのモバイルバッテリー
モバイルバッテリーはとくに、付加価値に目を奪われがちです。
ここでは、充電器にあまり詳しくない友人や同僚でも知っている人の多いAnkerを例に説明します。
製品の特徴をまとめるとこんな感じです。
- スマホを約2回充電できる10000mAh
- 薄型軽量コンパクト
- USB-C×2、USB-A×1
- USB-Cケーブルがストラップ式で付属
- 残量はディスプレイ表示
- 最大20W出力
- 3台同時充電も可能
「大人気モデルの後継機が出た!発売直後から大人気でAmazonは品切れ中!」
Youtuberがこぞって紹介していますが、これも注意点があります。
それは、「最大3台同時充電可能」という売り文句。たしかに、USB-C×2/USB-A×1搭載なので3台同時充電できますが、現実的ではありません。なぜなら、同時充電時は最大合計15W出力だから。ここまで読んでくれたみなさんなら、これ以上の説明は不要ですね。
もっとも、この製品自体の売りはケーブル付属をはじめとした付加価値と価格の安さです。付加価値に目を奪われて出力を見落とさないように、という例です。スマホ2台持ちだから同時充電できるのは助かる、と思って買うと充電が遅すぎて使い物になりません。
まとめ
- 充電器の出力はワット数を見る
- スマホ用充電器は20Wが理想
- 付加価値込でも妥協するのは15Wまで
だまされたと思って20Wを使ってみてください。充電が速すぎて世界が変わります。
とりあえず20W充電を試してみるなら、コンパクトかつ低価格なCIO Mate Charger001がおすすめです。
第2回では充電器のポートについて解説します。
コメント